単行本累計1700万部を売り上げ映画化もされた楠みちはる氏作「湾岸MIDNIGHT」の誕生に大きなインスピレーションを与えるモデルとなったストリートレーシングチーム。
関東圏を主戦場として毎週土曜日深夜に偽りの無いリアルな超高速域でアクセル踏抜きバトルを繰り広げ、名実共に最速の事実を刻み続ける集団。その名は「Mid Night」

1982年に結成されたMid Nightは湾岸高速の印象が強いがその他にも東名高速、首都高、箱根ターンパイク、第三京浜などあらゆるストリートのステージにおいて圧倒的存在感を放ち、多くの伝説を作り上げてきている。

チームの構成車種はポルシェ、GT-R、Z、RX-7、スープラ、フェラーリ、ランボルギーニ、NSXなどで、全てのマシンがオーナーの全情熱を宿したスペシャルチューンドカーであることは言うまでも無く、初代会長のポルシェ911ターボにおいては、ポルシェ本社に直接持ち込まれた後にヴァイザッハのレースカー開発センターにて、レース界を席巻したGr.4/5カーの934や935のノウハウを惜しげなく注ぎ込まれた、世界に一台だけの特別なポルシェワークスチューンである。
ジェット機の離陸前と全く同じ金属的なタービン音を一度でも聞いた者はそのインパクトサウンドを決して忘れ無い筈だ。

また初代副会長のABR細木エンジニアリング130Zは外装、内装、エンジンルームに至るまで無類の美しさと強烈なオーラを纏っており、1980年代格好良い国産チューンドカーが非常に少なかった時代、正にミッドナイトの看板カーと言うべき「美」と「速」を兼ね備えたスペシャルな一台であった。この車両はミッドナイトメンバーの間で乗り継がれ現在は3代目のオーナーが所有しており、門外不出の一台である。完成された外装は、ほぼ当時のままだが仕様は時代に合わせた進化を繰り返しており、今も現存している色あせる事の無いマシンだ。

その他の車両にも箱根ターンパイクで無敵を誇った白いポルシェ930ターボ、トーションバーサスペンション日本最速記録を作ったTBK911ターボ、驚愕のワンハンドドライブでマシンを自在に操る964カレラ、ブーストアップのみで実測値300km/hを達成したBNR32 GT-R、 90年代の湾岸全盛期にストリートバトル無敗の青いFD。。

こういったマシン達の後を追うかのように、無数のレプリカマシンが各地に増殖していくなど、Mid Nightの与えた影響は数知れない。

これらの車両以外にも谷田部最高速チャレンジにおいて、200マイルを(320km/h)オーバーしたポルシェ、GT-Rはチームに何台も存在しており、今でこそ300km/hや200マイル(320km/h)の記録は当たり前の時代であるがそこに到達するまでのそれぞれのチューニングカーの進化においてミッドナイトは常に最前線に位置づけられ、当時300km/h越えのマシンがここまで揃っていたチームを探すのは難しい。

そんなミッドナイトの組織内は完全な縦社会であり、西暦2020年で結成38年目となるが黎明期から90年代までは特に厳格だった。その理由は単純明快でミッドナイトのメンバー及び入会を目指す者は、地元で己こそが一番と自負し集まって来た究極の負けず嫌いの気が強い者ばかりの集合体であった為だ。

チームメンバー同士でも本気の命がけバトルが頻繁に行われ、トップギアベタ踏みで拳1つ分の車間距離はお互いを理解していないと出来ないアクションで尚且つ超高速域バトルは馴れ合いじゃれ合いの仲良しクラブではかえって危険であり、毎回一等賞を狙っている様な人間ばかりが集まっているチームの統制や秩序を保つ為にも必然と出来上がった形である。

その為ミッドナイトの入会希望者はすぐに入会は許されず「丁稚」と呼ばれる見習い期間がある。
いくら通っても超高速域での走りそのものや精神的な部分が基準に達しないものは入会を許されない。5年通ってやっと入会を認められた者も居れば、己の限界を知り入会を諦めたものも多い。

入会に関しては幹部全員の賛成があって初めて認められシルバーステッカーを貼る事を許されるが半端な走りをしているものは再び剥がさなくてはならず、メンバーの証であるマフラーの上に光るそれを他車とのバトルの最後に見せつける事は至上命令である。
それは最速集団であり続ける為の厳しさに
他ならない。

余談ではあるが正会員の証であるMid Nightシルバーステッカーを車両前後に斜めに貼る独特のスタイルは今でこそ当たり前になっているがそのルーツは他ならぬミッドナイトスタイルある。

2019年ミッドナイトは前会長の退会により、二代目会長の元、新たなスタートを切る。
また時代を先読みしてチーム内の公道バトルは終わりを遂げた。
結成当時から時は流れ、メンバーの中にはレース界に進出して大成功を収めた者、自動車メーカーでスポーツ車両開発に携わりここでも最速記録を出す者、人気のカーショップを営む者など成功者は多い。
それは己のポリシーを貫きそして踏み抜くミッド魂が根付いているからかもしれない。

歴史と伝統を引き継ぎ、今も尚走り続けるミッドナイトの新たなるステージは無限大である。

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